SHIPS展開スタート特別インタビュー
ディレクター阿部に聞く、『SHIPS展開スタート、別注生産までの軌跡』
~あのSHIPSにASUMEDERUが!…帰ったら奥さんに自慢しよ。~
昨年、ASUMEDERUがひとつ目標としていた全国展開のセレクトショップでの採用、さらには別注品の製作を達成したASUMEDERUディレクターの阿部雅由さん。
お取扱い決定の一報を受けた時は、『自分を信じろ』と書いた待ち受け画面を見つめ、気付けばスマホが割れるのではないかというほどぎゅっと握りしめていたといいます。服や物が大好きでこだわり派の一面や、YouTubeやラジオ出演もスマートにこなす姿からはなかなか想像がつかない“極センシティブ”な部分についても聞いてみました。聞き手は、ASUMEDERUとASUMEDERU itakuraのあれこれを、無表情(時々キレ顔)でこなすHです。
H: まずは、SHIPSでの展開おめでとうございます。
阿部さん(以下、ア): ありがとうございます。若い頃から馴染み深かったセレクトショップにASUMEDERUが置かれるっていうのは、ちょっとぐっときました。
H: みんな若い頃から馴染み深いセレクトショップ御三家ですしね。
ア: あんまりこう言うと、他のお店はそうでもないんかい!って伝わっちゃうとあれなんで、そういうことじゃないっていうのは書いておいてください。
H: 太ゴシック48ptで書いておきます。 で、どんなコネ使って裏ルートから行ったんですか?
ア: ないですよ!(笑) なんのコネも無く、ちゃんと表の門から商品を気に入ってもらっての採用です。
H: たしか、2年前の展示会でバイヤーさんが立ち寄ってくれたのがスタートでしたよね。
ア: そうですそうです。それから展示会のたびに来てくれて。
H: 自分たちのブランドのことをこう言うのもなんですが、世間ではほぼ無名みたいなブランドをバイイングするって、担当の方はチャレンジだったんじゃないかなって思います。
ア: そうかもしれないです。でも最初からずっと素材の素晴らしさを感じてくれていて、他と被らない特長を気に入ってくれていました。最終段階で悩んでいた時、上司の方の「あれやんなよ。あれ、絶対良いからさ。」っていうひと言が決定打になったそうです。
H: ユー、やっちゃいなYO!みたいなもんですね。
ア: セレクトショップって本来はそういうものですからね。無名だろうが有名だろうが、良いものを探してきて出会わせてくれるっていう。それがセレクトショップの面白さですから。だから、まだ世間に広く知られていないASUMEDERUをいいなって思ってくれて選んでくれたのは、本当のセレクトショップのお仕事だなって思います。あら!なんか上からみたいに言っちゃった。偉そうに聞こえたらごめんなさい!
H: 大丈夫ですよ。そんな時は雅(ミヤビ)に入れ替わってもらいましょ。
※雅(ミヤビ)=時々阿部さんの中に登場する濃い女子キャラ。忖度の無い鋭い意見が小気味良い。
H: SHIPSで展開している商品は、配色がSHIPSのオリジナルなんですよね。形も限定の三つ折り財布があります。
ア 定番型と定番色の取扱いもあるのですが、採用が決まった時点でオリジナル配色にしたいという要望があって。いくつかコンビの組み合わせは作ってみたけどピンとこなくて、うちの営業の志賀さんに好きな組み合わせで作ってあげるってそそのかして試作したものを、バイヤーさんが「そのグレーのコンビ良いですね!」とすごく気に入ってくれて一発OKでした。
H: ガーシーお手柄。
ア: 僕、SHIPSって、今のセレクトショップの礎を築いたセレクトショップだと思っていて。僕の感覚ですが、他のセレクトショップと比べてトラッドというか。
大体どのお店に行ってもその時旬なブランドが置いてありますけど、悪く言えばみんな同じに見えてしまって。
でもSHIPSは昔からあまり他のセレクトショップに置いていない、SHIPSに行かないと出会えないモノが結構あるんですよ。トレンド的な派手さは無いけど、でも本質的な部分で良いモノが置いてある。歳を重ねても着続けられる服や、変わらずに持ち続けられるモノって結局クラシックなんですよね。
30代半ばを過ぎた頃からその有難みがやっとわかりました。
H: そうですね。大人になるにつれて染みてくる感じ。
ア: なんか、日本人に合う、背伸びしない、かたくなにアメトラの流れを守ってやり続けている、みたいな感じですかね。
H: アメトラ、アイビースタイルってセレクトショップが連れてきたスタイルなんですね。
ア: アイビーは、ファッションのスタイルなんですけど、それよりももっと丸ごとの、アメリカのその大学の学生たちのライフスタイルそのものっていうか。
それをVAN創業者の石津さんが石津商店からVANでつくります。ただ、最初から本当のアイビースタイルを再現できていたわけではなく、見聞きしたアイビースタイルを日本で製造していたわけだから、職人が作れるものと本物のアイビースタイルって違いがあって。
で、石津さんたちがアメリカに取材に行った時に実際にアイビーの大学生を目にしてびっくりするわけですね。スーツ、ビシッと。という感じではなく、カットソーや短パンにビーサンですから。それからアメカジと呼ばれる今のイメージの感じになっていくわけです。
H: みゆき族のように、“アイビー風”のファッションですね。みんな、憧れを買っていた、ということですね。
ア: そうですね。今みたいに輸入して売っているというのは、闇市みたいな所でしかほとんど無かった時代なので。そんな1970年代、本物を輸入してありのままを売り始めた三浦商店、ミウラ&サンズですね。こちらは100%輸入でのスタート。ここが“セレクトショップ”の概念の始まりですよね!
H: なんだか阿部さんが熱くなってきました。
ア: 売れるものを売るんじゃない!いいモノ、『夢』を売るのがセレクトショップなんです!
H: わかりました。阿部さん自身はSHIPSで買った思い出のものってありますか?
ア: 僕はね、あんまり無いんです。
H: 無いんですか!(笑) 私は20年以上前にSHIPSで買ったセーター、いまだに持ってますよ。かわいくて捨てられないです。20年間ほとんど着てないんですけど。
ア: えー!リアルヴィンテージじゃないですか。僕はね、21か22歳の頃、SHIPSでヘリンボーンのネイビーブルーのスーツを買って、おばあちゃんのお葬式に着ていきました。
H: え!お葬式にその格好大丈夫だったんですか?
ア: はい、おばあちゃんはすごくお洒落な人だったので喜ぶかなと思って絶対それが着たかったんです。父親にはちょっと言われましたけど、母親は何も言わなかったですね。
H: みんなわかってくれてたんですねきっと。当時から「自分を信じろ」の精神をしっかり持ってたんですね。
ア: あ、これですか。(笑)(阿部さんのスマホの待ち受けは「ワンピースのシルバーズ・レイリーの「疑わない事それが強さだ」っていう画像に「自分を信じろ」という文字が書いてあります。)
自分を信じれば、そのようになりますから。
H: 阿部さんは何色の覇気を体得できたんでしょうか。
「人生は思う通りに」っていうのは我々のスピリチュアル井戸端会議の大テーマですし、今日はその話とか、我々の別名「根に持つお」の話もしたかったんですが、もうだいぶ長くなってきたのでまた次の機会にしましょう。
ア: ねにもつお君の話はまずい!でもやりましょう。(笑)